シリーズ3:環境インタビュー|一般社団法人地球環境情報フォーラム

シリーズ:環境インタビュー

協会役員をはじめ会員企業の皆様に、UNEPに対する想いや環境への取り組みなどについてインタビューを行いました。

シリーズ1
日本UNEP協会 鈴木基之代表理事
シリーズ2
株式会社T&Dホールディングス
シリーズ3
日本UNEP協会 平石尹彦理事
シリーズ4
トヨタ自動車株式会社
シリーズ8
株式会社エッチアールディ
シリーズ9
日東電工株式会社

第3弾:
ナイロビのUNEP本部で環境アセスメント・情報局長などの任に就いていた、日本UNEP協会の平石理事が語るUNEPとは―。

平石尹彦×UNEP
―UNEPとは環境保護だけを叫ぶ機関ではない―

平石尹彦(ひらいし・たかひこ)/東京大学工学部卒業。東京大学大学院修士課程修了。環境庁(現環境省)にて有害化学物質、水質汚濁など、さまざまな分野の公害対策に従事。ケニア大使館環境アタッシェ(技術協力も担当)、OECD環境局職員、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ビューロー委員、UNEP事務局職員(環境アセスメント・情報局長など)のほか、 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)専門委員会メンバー、国立環境研究所地球環境研究センター客員研究官、IGES理事、東京工業大学・上智大学・大阪大学・京都大学非常勤講師、環境省参与などを歴任。現在、日本UNEP協会理事、 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)参与。

― UNEPとは、どのような団体なのでしょうか?

UNEPは「国連環境計画」という名称であることから、環境保全だけを叫ぶ機関と思われがちですが、そうではありません。「環境」だけでなく、資源の有効な活用、将来への保全、持続可能開発を捉えた活動を展開しています。2代目のUNEP事務局長であったトルバ博士は、17年の長きにわたりUNEPと世界の環境活動をリードした人物でしたが、いつも強調していたのは、「UNEPは環境だけを取り扱おうとする機関ではない。環境と開発の両方を扱うのだ。開発途上国が必要としていることは何なのか、今与えられている資源をどう長期的に使うのかを考えることが重要だ。それを忘れるな。」ということでした。

最近では、去年のSDGs(2030アジェンダ)を実行する中心的機関になろうと頑張っています。しかし、比較的小規模な機関でもあり、国連専門機関や多くの政治的なからみもあるなかで、苦労が多いようです。

― 平石理事の日本UNEP協会への想いとは?

UNEP協会を「再度」作ろうというお話をいただいた時は、どうしようか迷いました(笑)。20年以上前に存在した日本UNEP協会、日本UNEP委員会が、成功裏とは言えない結果に終わったという事実があったからです。

しかし、宮内理事をはじめとする多くの熱い想いに動かされ、UNEPに対する恩返しをすべきと決意しました。鈴木代表理事をはじめ名だたる理事がいらっしゃるので、私は縁の下の、下の、下の力持ちぐらいになれればと考えています。

現実のはなし、日本では、まだUNEPはよく知られていないのです。情けないぐらいに。でもUNEPは、広く知られる必要がある重要な機関だと、私は思っています。昨年の日本UNEPフォーラムの時に感じましたが、UNEPをよく知ることと、環境問題をよりよく理解することは共通するところが多く、UNEPの活動を知ることを通じて、個々人の環境保全の実践活動をより高めていくことができるよう協会が支援していければ、など考えています。

― それだけUNEPにご自身を捧げるきっかけが、何かあったのでしょうか?

やはり、世界の環境を保全し、将来世代により良い環境を残すべきだと信じていたことがありましたが、私の場合は、日々、トルバ事務局長の熱意と人格に触れることでそれが確固なものになったと思います。1980年代にナイロビのUNEPに行き、結局そのまま日本の役人をやめてしまったという、人生を変える重要な決定をしたわけですが、UNEPの9年間の7つのポストは、常に、私の人生最後の仕事と思って頑張っていたつもりでした。

いろいろな偶然や事件が重なって出来上がった波瀾万丈の人生でしたが、働いた分野がすべて真正面から打ち込めるものであったことは幸運でした。人生、熱意なくして仕事をするのはもったいないですから。仕事の選択・展開のなかで、ほとんど後悔をしないで済んだ人生を送れたのは幸せなことでした。

ナイロビにあるUNEP本部(本人撮影)

― 平石理事が目指す地球環境情報フォーラムとは?

まず、UNEPと環境実践活動に関する啓発普及ですね。前にも述べたので、繰り返しませんが、これに尽きると思います。UNEPは国連機関なので、政府との関係なしにやっていくわけにはいきません。協会はNGO(非政府組織)ではあるのですが、やはり、政府との協力をもう少し増やしていく必要があります。これは重要な課題です。

また、日本の企業については、資金面のスポンサーという役割を超えて、より広い市民団体等とともに、UNEPに関する啓発普及、さらにいえば環境保全活動を一緒にやっていくという同士としての役割を期待しています。

日本UNEP協会は善意の小さな塊としてスタートしました。これを維持、拡大していきたいものです。

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