シリーズ9:環境インタビュー|一般社団法人地球環境情報フォーラム

シリーズ:環境インタビュー

協会役員をはじめ会員企業の皆様に、UNEPに対する想いや環境への取り組みなどについてインタビューを行いました。

シリーズ1
日本UNEP協会 鈴木基之代表理事
シリーズ2
株式会社T&Dホールディングス
シリーズ3
日本UNEP協会 平石尹彦理事
シリーズ4
トヨタ自動車株式会社
シリーズ8
株式会社エッチアールディ
シリーズ9
日東電工株式会社

第9弾:
日東電工株式会社に、化学メーカーならではの環境への取り組みをうかがいました。

創業100周年へ向けて、
今こそできる環境活動を

グループ環境戦略部 伊藤稔部長

日東電工株式会社(にっとうでんこう、英: Nitto Denko Corporation)は、大阪市に本社を置き、粘着テープなどの包装材料・半導体関連材料・光学フィルムなどを製造する。海外売上比率は7割を超え、全世界で事業を展開している。

―2018年に創業100周年を迎えますね。

はい。Nittoグループの 沿革をお話ししますと、1918年、東京都の大崎で創業しました。1961年からはニューヨークをはじめとして海外に進出し、1969年には台湾に工場を建てることで、海外へ製品を送り出す拠点としました。2000年にはアメリカに海外に初めての研究拠点を設立し、現在はシンガポール、スイス、中国にも設け研究所として海外のニーズを拾っています。最近では、2011年、今年度と核酸医薬関連の会社を買収しました。医薬系の会社を買収したのは、事業の多軸化をすすめており医薬分野の事業強化が必要と考えたからです。

弊社はまだ1兆円企業ではありませんが、今のところ売り上げは7,900億円ぐらいです。従業員は約30,000人で、グローバルに働いています。ここ数年は液晶テレビやスマートフォンの市場が伸びていたため売り上げも順調に伸びていました。2018年の創業100周年に向けて、更なる成長をめざしいろいろと議論を交わしている最中です。

NittoにはGNT(グローバルニッチトップ)、ANT(エリアニッチトップ)と呼ばれる戦略がありまして、どちらもニッチトップと付きますが、ニッチな分野で1位を狙いましょうというものです。グローバルに事業を展開するのがグローバルニッチトップで、ある特定の地域で事業を展開していくのがエリアニッチトップです。

また、ユニークな取り組みとしては50年以上続く「三新活動」という市場開拓活動などがあります。

化学メーカーだからこその環境への取り組み

―環境への取り組みを始めたきっかけと、体制について教えてください。

きっかけは、1980年代のオイルショックでした。事業活動の継続に必要な有機溶剤が購入できないかもしれない状況になってしまったので、社内で回収・精製し、原材料として使用するようになったのが環境への取り組みの始まりです。

ここ10年間は、環境負荷の削減と企業の付加価値の向上に取り組んできました。2004年度に目標を設定し、2015年度が目標の最後年度でしたが、目標は達成できませんでした。どんな目標だったかと言いますと、2005年度を基準として、環境負荷付加価値生産性という指標を2015年度までに2倍にするというものです。環境負荷付加価値生産性とは環境負荷(1トン)に対して、会社がどれだけの付加価値を生み出したか(百万円)を表す指標で、環境負荷を下げること、付加価値を上げることで向上する指標です。

我々はエネルギーや有機溶剤の使用、廃棄物の発生等の環境負荷を減らし、2004年度に想定していた会社のポートフォリオ・売上計画が達成されれば、目標が達成できるだろうと考えていました。しかしながら、新しい製品やサービスの提供などで付加価値を上げていくのが難しく、128という数字で終わりました。2018年に向けては、環境負荷の削減に特化した、もっとストレートな目標にしようということで、CO2排出量の総量目標を設定しています。事業の想定以上に成長したとしても、目標値は変えないで活動しようと考えています。

活動の推進は、環境安全委員会という委員会組織がありまして、この委員会でいろいろなことを決めていきます。環境管理委員会でマテリアリティ分析を実施した結果、気候変動、資源、生物多様性、水の危機への対応を中期的な重点課題に設定しています。重点課題と合わせて、事業活動に伴い発生する環境負荷もマテリアルフローという形で数字をきちんと押さえて、購入した材料がこのぐらいで、使ったエネルギーはどのぐらい、そして水はどのぐらい使っているか、といったように現状を正確に把握し、環境によくないものを減らす活動を推進しています。

重要な原材料である有機溶剤量やCO2を減らすのは大変ですが、我々は80年代から環境に関連する様々な事業上のリスクを排除しようと、これまで取り組んできました。現在は、これらの自社の環境負荷削減の取組みだけではなく、地球環境問題の解決につながる製品・サービスの提供にも力を入れています。製品の提供を通じて、地球全体の環境が良くなればと考えています。

我々化学メーカーは、原材料や燃料で化石資源を多く利用するので、一般的には地球環境にネガティブなイメージがありますが、イノベーションの力で、製造に使用するCO2より多くのCO2を削減するような製品を提供できる。これは化学メーカーの強みだと思っています。イノベーションを具体化していって、地球環境問題を解決する製品を世界に提供していくのが一番の環境貢献だと思っています。

―100年近く技術を蓄積されていますが、その技術を使った環境への取り組みはありますか?

弊社はこれまで、いろいろな事業を通じて、人の暮らしを豊かにする商品を提供してきました。経営層から、我々の製品を通じて社会に貢献していきたいという希望が強く出まして、その言葉が如実に表れているのが「グリーン・クリーン・ファイン」です。グリーンが環境ソリューション、クリーンは新エネルギー、ファインはライフサイエンスの事業分野を表しています。環境・ライフサイエンスの事業にNittoのイノベーションをこれまで以上に提供していきましょうという戦略です。

グリーンな製品の一例としては、窓用の透明遮熱断熱シート「ペンジェレックス」が挙げられます。窓に貼ることによって、窓の透明性は維持しながら、夏でも冬でもある程度の室内気温を保つことができます。エアコンの使用を減らすことを目的とした省エネ製品ですね。

クリーンな製品としては、ネオジム磁石を提供しています。これは従来のネオジム磁石とは異なる製造方法を用いていて、通常のネオジム磁石と比較し、自動車などのモーター性能を20~30%向上させることができます。自動車の燃費向上につながるため、省エネに繋がります。他には、波長変換機能付き太陽電池用封止シート「レイクレア」という製品がクリーンにあたります。この封止シートを太陽電池モジュールに使用することで、モジュール出力を2%程度高めることが可能です。従来、発電に寄与していなかった紫外領域の光を可視光に変換することで発電に寄与させることができます。

グリーン、クリーン以外にもファインとして核酸医薬などのライフサイエンスの分野にもさまざまな製品を提供していき、社会に貢献していきたいと思っています。

日本UNEP協会と共に、環境活動を次のステージに

―そういった日本企業の技術力、ノウハウを海外にどんどん伝えていけば、素晴らしい環境への貢献になりますね。日本UNEP協会にはどういう期待を持っていますか。

おっしゃる通りです。日本UNEP協会には、UNEPのグローバルなネットワークを活用して、日本企業の優れた環境技術やノウハウをどんどん発信していって欲しいです。

また、UNEP本部では、いろいろな学術レポートや研究を行われていますよね。弊社でも、社員への環境教育の教材などに使わせていただいています。

現在、UNEP本部で提供されるレポートは日本語がありませんので、日本UNEP協会で日本語化をしていただけると助かります。素晴らしい研究成果が、日本の皆さんにももっと伝わるようになるといいですね。

社会が求める活動にイノベーションで応える企業―日東電工
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