シリーズ4:環境インタビュー|一般社団法人地球環境情報フォーラム

シリーズ:環境インタビュー

協会役員をはじめ会員企業の皆様に、UNEPに対する想いや環境への取り組みなどについてインタビューを行いました。

シリーズ1
日本UNEP協会 鈴木基之代表理事
シリーズ2
株式会社T&Dホールディングス
シリーズ3
日本UNEP協会 平石尹彦理事
シリーズ4
トヨタ自動車株式会社
シリーズ8
株式会社エッチアールディ
シリーズ9
日東電工株式会社

第4弾:
日本UNEP協会正会員のトヨタ自動車株式会社に、環境保護活動についてお話をうかがいました。

トヨタ環境チャレンジ2050

左から、環境部 石本義明担当部長、中野規子主任、西堤徹プロフェッショナルパートナー、三井希江子部員

トヨタ自動車株式会社(トヨタじどうしゃ、英: Toyota Motor Corporation)は、世界最大手の日本の自動車メーカー。単一メーカーとしては日本最大で、世界各地に拠点を有していると同時に、トヨタグループの中核を占める。2016年3月期連結売上高28.4兆円は国内首位。TOPIX Core30の構成銘柄の一つ。源流は豊田自動織機。通称「トヨタ」、英語表記「TOYOTA」。トヨタグループ内では「TMC」の略称で表記される。

― どのような環境活動を行われているのでしょうか?

環境への取り組みは、これまで5カ年計画でやってきましたが、従来通りの5年毎の計画でいいのかという議論になりました。それはCOP21パリ協定の合意に至るまでの様々な過程を見ていて「やはり長期の目指すゴールが必要ではないか」という結論に至り、2050年の目指すべきゴールとして「トヨタ環境チャレンジ2050」~ゼロの世界にとどまらない”プラスの世界”を目指して(Challenge to ZERO & Beyond)~を公表いたしました。

まず1番目に、クルマから出るCO2を2050年90%削減(2010年比)にチャレンジすることを宣言しています。

先ほど申しました、国際合意2℃未満シナリオを考えますと、2050年には、ほとんどエンジンだけの車はなくなるというような状況になります。 したがって、ハイブリットはもちろんのこと、PHV(プラグインハイブリッドカー)、それからFCV(燃料電池自動車)、EV(電気自動車)といった次世代電動車両の普及のための技術革新を今後一層加速させる必要があると考えています。

もう一つの大きな柱として、工場から出るCO2を、2050年までにゼロにしようというチャレンジを掲げています。 実際、ゼロというのは本当に難しいところがあります。やはり、再生可能エネルギーを使ってもゼロにならない部分もあるんですけれども、モノづくりの革新でゼロを目指すことを公表いたしました。

まずは、徹底した最先端の省エネ技術の導入と、再生可能エネルギーや水素を活用した工場ということで、2020年までに国内外にモデルプラントを作り、新しい工場や、切り替えのタイミングに焦点を合わせて世界に展開していく考えです。

具体的には、再生可能エネルギーの導入に加え、CO2フリー水素をうまく活用しての発電・蓄エネや、水素の直接利用、また工場内運搬にも水素を活用するといったモデルプラント作りに向け動き始めています。

ライフサイクルのCO2を考える

次に、ライフサイクルのCO2というのを聞かれたことはありますでしょうか? 我々は素材や部品を購入しているわけですが、クルマのテールパイプから出るCO2を減らしても、その素材や部品は金属や樹脂などで作られていますから、採掘される時、作る時、運ぶ時にどうしてもCO2が出てしまいます。

クルマのCO2を減らすために電動化を進めますと、逆にそのための部品も増え、その部材の製造過程のCO2総量が増えてしまう。ですから開発の初期段階から仕入先様との連携をより進めて、トータルでCO2を減らすことを、できることから取り組んでいます。

4番目が、水です。2030年の国連の予想をみると、アメリカ、中国、アフリカなど、いたるところで水ストレスが高くなるということですから、トヨタとしてはその地域の水インパクトが最小になるよう、徹底的に使用量を少なくし、お還しするときはきれいにして還すということを目指しています。実はフランスでは既に100%循環と雨水貯留で、完全取水ゼロを達成しており、こういうことを世界に広めていくことを公表いたしました。

5番目に、車を作るには金属が要る。その金属という資源自体も残していかなければいけないということで、我々は資源循環でのクルマづくりを目指したいとの思いで公表いたしました。

たとえば、プリウスの廃バッテリーを廃車から回収して、太陽光パネルからの蓄電システムに再利用していますし、再利用に適さないものは焙焼し、選別して原材料に戻すリサイクル(特許技術)も既に行っています。また銅については将来の枯渇が予想されています。クルマには多くの電線が必要ですし、電動車両のモーターにも銅線は必要です。ただしクルマの電線は非常に細くて回収・リサイクルが困難ですが、機械的に99.97%回収できる技術を持っていますので、これを海外などに展開して純銅リサイクルを進めたいと考えています。

地球環境のためにトヨタができること

― 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジもされていますね。

はい、6番目が自然との共生になります。これまでもトヨタの森づくりはここ10年弱でグローバルで1,000万本以上の植林をしてきました。今までは国内外の自社工場まわりに植林をするという形が多かったのですが、それだけではなく、グループ・関連会社の皆様や、仕入先様、販売店様、地域の皆様と志を共にしてこういう活動をつないでいきたいと考えています。

既にグループ23社と具体的な活動を開始いたしました。先日も東北被災地の植樹にグループ各社総勢100名以上で、森の防潮堤づくりに参加したり、絶滅危惧種保全のための海辺の生態系をつなぐ活動など、世界各地で仲間が活動を開始いたしました。とにかく、ものすごい数の活動が企画されています。また、UNEPグローバル500の受賞を機に始めた「トヨタ環境活動助成プログラム」も10年以上継続していますが、まさにこれを機に海外版助成プログラムを日本UNEP協会さんと一緒に作れたらと思っています。

また、環境教育貢献はこれまでも各地域の工場で実施していますが、「未来につなぐ」子どもにもっとスポットを当てて世界各国で輪を広げたいと思っています。例えばタイの工場に非常にきれいな森ができましてそこにラーニングセンターを作って、タイのシリントン王女をお呼びして6月に式典を行う予定です。 これからグループ各社と、地域社会に輪を広げてという決意で進めています。また時代の一歩先をいく技術やシステムも国際機関や団体と協力して開発し社会に貢献したいと考えています。

以上が、公表した内容と直近の状況ですが、振り返りますと、長期目標の議論は2年前から始めたんですが、最初はちゃんと扱ってもらえませんでしたね。「何を言いだすんだ」という感じでした。トップの方々の理解を得る為に、国際社会の要請から見るとこのぐらいやらなければ社会ももちませんし会社ももちません、せっかく環境のトヨタというブランドがありながら今のやり方では無理です、と訴えました。

会長を始め様々な役員の後押しもあり、何とか社内決裁・公表に至りましたが、そこからは不毛な議論はなくなりました。そのおかげで会社のマインドセッティングができて、グループ全社の皆さんも50年ビジョンを共有して公表もされているので、ベクトルもぐっと上がったような気がします。

ただし、全て道筋が明確になっているわけではありません。またこれらのチャレンジ目標は先ほど申しましたように我々単独では成しえない困難なチャレンジです。仕入先様を始め様々なステークホルダーの皆様のご協力が必要になります。こういう取材を通じて皆様のご支援をお願いできたらと思っています。

「UNEPしてる?」を合言葉に、UNEPとUNEP活動の認知度を高めようと日本UNEP協会が作成したTシャツを着て。
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